2008年11月29日土曜日

オバマ次期大統領にIVAWが公開書簡を送付した

(以下の日本語訳:イラク市民レジスタンス連帯委員会)

ケリー・ドーアティ Kelly Dougherty

元州兵陸軍曹長   戦争に反対するイラク退役軍人の会会長

 IVAWのメンバー、支援者のみなさん

 11月4日、アメリカ国民は人種や性別や階級や宗教の境界線を越えて集まり、アメリカ合衆国大統領にバラク・オバマを選出したのであり、これはアメリカにとって歴史的な瞬間を作ったのである。

 次期大統領に当選したオバマの選挙戦の経過の中で、変化が可能だという希望に多くの人たちが心を燃え立たせたのであり、我々はその希望を共有する。この投票がいかに重要なものであるかをよく考えるにあたって、我々の闘いは投票の夜で終わりはしなかったのだと言うことを思い起こすことが重要である。真の変化は、どんな個人の行為によって起こったものでも決して無く、最後の最後まで闘いをやり抜く勇気と信念を持つ人々によって草の根からの組織化の努力をむすびあわせることを通じて初めて起こったのである。

 過去4年半にわたって、戦争に反対するイラク帰還兵士の会は、仲間の帰還兵士や、アメリカ軍の兵士や、アメリカ国民大衆や、全世界に対して実際に我々の変化のメッセージを届けてきた。我々のメッセージはずっと同じである。すなわち、今こそイラクから全ての占領軍を即時撤退する時だ。今こそイラクの民衆に直面する死と破壊を終わらせ、イラクの民衆に必要なものの対策をする時である。今こそ退役軍人が必要としていてアメリカに奉仕している間に受け取ってきた保護と給付金を提供する時である、と。

 ここ数ヵ月間、我々は政党に対して申し入れをすることに焦点を当てることを拡大してきたのであり、今後数ヶ月間アメリカ合衆国の新大統領及びそのスタッフとの公開の対話が継続することを期待している。我々は、オバマ次期大統領に2007年8月に彼が「この戦争を終わらせることは、私が政権についた時の最初の優先事項になるでしょう」と演説したことを思い出させるだろう。

 我々はアメリカの経済危機が最優先事項にならねばならないということを理解し憂慮を共有しているが、多大な出費を要するイラク占領-それは単純に言って継続することが不可能な莫大な経済的負担である-を継続していては、アメリカの経済を立ち直らせることはできない。

 焦点がイラクでの戦争からアフガニスタンでの戦争に変わっている事を知っているが、我々は、オバマ次期大統領には、アフガニスタンの占領を拡大するというどんな決定をする前にも、この紛争についてアフガニスタン民衆とアメリカ軍の帰還兵士の声を聞くように勧める。

 イラクとアフガニスタンの戦争の帰還兵士として、我々は戦争の最初の犠牲者こそが真実なのだということを、自らの経験を通じて見てきた。我々は又、兵士や帰還兵士が自らの声を見つけ自分の話を語る時に存在する力が、戦争の誤った栄光と英雄主義の中で失われた真実をよみがえらせるのを見てきた。

 これが戦争に反対するイラク帰還兵士の会が広げ続けているメッセージであるのは、一人の政治家や一つの政府や一つの政党が我々の求める変化を作り上げると言うことはないだろうからである。そうではなくて、今こそ我々がその変化を獲得するための組織化を集団的に継続する時なのである。バラク・オバマの当選は、闘いの中に新鮮な機会を与えているが、アメリカの歴史が教えるとおり、戦争と占領が終わる時には、民衆と民衆の軍隊が本当の力を手中にしているのである。我々は自らの目的達成のために闘いを継続し、そしてあなたが我々に合流するように求め続ける。

 イラク占領を終わらせるために兵士と帰還兵士を組織し続けるためにはあなたの助力が必要である。今日、寄付をして、IVAWの1400人以上のメンバーの声を広げる手助けをしていただきたい。

 継続した支援に感謝いたします。


********** 反戦イラク帰還兵の会からオバマへの公開書簡*******

次期大統領オバマ氏への公開書簡

親愛なるオバマ次期大統領殿

 反戦イラク帰還兵の会(IVAW)は貴下の勝利をお祝い申し上げます。またジョン・マケイン上院議員とオバマ氏に対し、国を思う気持ちからのひたむきな献身と現在我が国が直面している深刻な諸問題を是正したいとの願いを称賛し敬意を表します。

 私たちは、火曜の夜にシカゴのグラント・パークで貴下が話された元気の出る言葉-すべての米国人に未来への希望をもたらしたにちがいない言葉に感謝します。
 しかしながら、私たちは、貴下が2007年11月の演説で多くの米国民に-特に米軍内で服務している米国民に-与えられた希望のことも覚えています。貴下は「私が(大統領に)就任したら、この戦争を終結させることが最優先課題となるだろう。イラクにおいては軍事的解決はありえない。イラクの指導者のみがイラクにおける内戦の中心に存在する苦しみを解決することができる」と話されました。

 その演説以降、我が国では多くの変化があり、現在、米国民の間で支配的な感情は、行き詰まった米国経済の建て直しこそが次期大統領の最優先課題とならねばならない、というものにちがいありません。私たちはそのような関心を理解しますが、一方、この経済の行き詰まりは、莫大な費用がかかっているイラク占領を継続する限り是正できないと確信しています。それは、持続することはとうてい不可能な巨額の負担となっています。米国民は毎週、何十億ドルもの資金を占領に投じていますが、その占領は私たちの財政を圧迫し、私たちの敬意と安全と何千人ものイラク人男性、女性、子どもらの命を奪っています。

 私たちは、貴下がもてるすべての政治的外交的圧力を行使して、占領を一刻も早く、そして完全に終結させることを心から要請します。未来は誰にもわかりませんが、次のことはわかっています。私たちの兵士は終わりがないかに見える占領に疲れ果て、家族のもとへの帰還を望んでいます。

 そして、我が国の勇敢な男女が帰還するとき、心身に受けた傷を癒すために、彼らに対して完全な諸給付と行き届いた医療ケア(心の健康への処置を含む)を提供することが必要です。彼らは少なくともそれだけの処遇に価しますし、そうすることは国としての義務です。

 また私たちは、イラク国民が耐え続けている甚大な人道上の危機を無視されることがないよう要請いたします。米国が侵略してから、400万人以上のイラク国民が故郷を追われ、あるいは難民となっています。イラク国民の死亡者は最も正確な数字で60万人を超えると推定され、さらに何万人もが心身に傷害を被っています。私達が犯した正当化不可能な侵略と占領の後遺症に対して、イラク国民は今後何世代にもわたって対処し続けねばなりません。私達がイラク国民の生命、社会基盤および文化にもたらした損害に対して賠償を行なうことは我が国の義務である、とIVAWは確信しています。

 私たちは、イラク戦争からアフガニスタンへと焦点が移行しつつあることを認識しています。同時に、アフガニスタンのカルザイ大統領は戦略の変更を求めており、アフガニスタン国民は、米国による空襲で殺された愛する家族の死を悼んで喪に服しています。貴下に要請します。アフガニスタンにおいて軍事力を増強するといういかなる決定にも先立って、この紛争に関するアフガニスタン国民と米国帰還兵の声に耳を傾けてください。

 私達は貴下に対し、イラク占領を終結させ、米国経済を修復することを要請します。また、そうすることによって、貴下は、「米国の新たなリーダーシップの夜明け」の到来を-若者と老人、貧者と富者、民主党員と共和党員、黒人、白人、ヒスパニック、アジア系、ネイティブ・アメリカン、同性愛者、異性愛者、障害者、非障害者など、すべての米国民に恩恵と希望をもたらす「変化の決定的瞬間」が到来したことを、事実で示すことになります。

 貴下はかつて「変化は上から起こるのではない、変化は草の根の人々の活動から始まる」と言われました。私達も同じ見解です。まさにそのために、反戦イラク帰還兵の会はイラク占領の終結・帰還兵に対する医療ケアと諸給付の実施・イラク国民に対する賠償を求めて、これからも組織化を続けていきます。これらは、貴下と私たちが友に力を合わせて対処できる領域であると考えています。

敬具
反戦イラク帰還兵の会

******* 以下原典 ********
An open letter to President-elect Obama

Dear President-elect Obama,

Members of Iraq Veterans Against the War congratulate you on your victory,and we admire and respect both Senator John McCain and you for your strong,patriotic dedication and desire to fix the deep problems our country now faces.

We appreciate your inspiring words spoken at Grant Park in Chicago on Tuesday night - words which should give all Americans hope for our future.
But we also remember the hope your words gave to many Americans in an August 2007 speech - especially those serving in our military: "Ending this war will be my first priority when I take office. There is no military solution in Iraq. Only Iraq's leaders can settle the grievances at the heart of Iraq's civil war."

Much has changed in our country since that speech, and the prevailing sentiment among Americans is that our faltering economy must now be your first priority. We understand and share their concern, but we believe that our faltering economy cannot be corrected if we continue the costly occupation of Iraq , an immense financial cost which is simply unsustainable. The American people are giving billions of dollars every week to continue an occupation that is draining our wallets, our respect, our security, and the lives of thousands of U.S. and Iraqi men, women, and children.

We fervently ask you to use all possible political and diplomatic pressure to quickly and completely end the occupation of Iraq.

Though none of us know what the future will bring, we do know this: our service members are tired of an occupation seemingly without end, and they want to return home to their families.

And when our brave men and women return home, they need to be given full benefits, and adequate healthcare (including mental health) to repair their physical and emotional wounds. They deserve no less, and we as a countryowe that care to them.

We also call on you not to ignore the humanitarian crises of enormous proportion that the Iraqi people continue to endure. Over four million Iraqis have been displaced or become refugees since the U.S. invasion of their country. Iraqi deaths are most accurately estimated at over 600,000 people, with many hundreds of thousands more having suffered physical and emotional injuries. The Iraqi people will be coping with the aftermath of our unjustifiable invasion and occupation of their country for generations to come. IVAW believes that it is the duty of our country to pay reparations to the Iraqi people for the damage we have caused to their lives, infrastructure, and culture.

We acknowledge the shift in focus from the war in Iraq to the war in Afghanistan. At the same time, Afghan President Karzai is calling for a change in strategy and Afghan families are mourning the deaths of their loved ones who have been killed in U.S. air strikes. We encourage you to listen to the Afghan people and U.S. veterans of that conflict before making any decision to escalate military force there.

We call on you to end the occupation of Iraq and repair our economy, and by doing so you will demonstrate that a "new dawn of American leadership" has arrived, a "defining moment of change" that will benefit and give hope to all Americans - young and old, rich and poor, Democrat and Republican, black, white, Hispanic, Asian, Native American, gay, straight, disabled and not disabled.

You once said that “change won’t come from the top. Change will come from a mobilized grass roots. ” We agree, which is why Iraq Veterans Against the War will continue organizing for an end to the occupation of Iraq, health care and benefits for returning veterans, and reparations for the Iraqi people. We hope that these are areas we can work together with you to address.

Respectfully,
Iraq Veterans Against the War