2011年3月20日日曜日

USLAWが対リビア軍事介入に反対

リビアに対する米英、仏軍の攻撃が始まりました。アメリカのUSLAW(戦争に反対するアメリカ労働者の会)は飛行禁止空気記の設定をはじめあらゆる軍事介入に反対を呼びかけています。この声明は攻撃の始まる直前の3月16日のものです。

(日本語訳:イラク市民レジスタンス連帯委員会)

リビアについてのUSLAWの声明―民主主義は飛行禁止空域によっては得られない

USLAW共同呼びかけ人 2011年3月16日

戦争に反対する米国労働者の会発表 2011年3月16日

民衆の民主主義の波が北アフリカ全体をとうとうと流れている。チュニジア、エジプト、リビア、バーレーン、イエメン、ヨルダン、アルジェリア、サウジ・アラビア、パレスチナ、イラン、そしてイラクで、幾百万もの人々が独裁政権を拒絶し、自らの権利を要求し、民主的な意思を擁護している。数十年間にわたる抑圧的で専制的な腐敗した独裁的支配が続き野蛮な報復攻撃にしばしば直面したにもかかわらず、民衆は政府と世界に対して、自治と、民主主義と、主権と、平和と、貧困の終焉を望んでいることはもはや拒否をされることはないと訴えているのである。

このことは米国政府を無様(ぶざま)な立場に置くこととなった。というのも、そうした支配者に対して、独裁支配を維持するために使用されてきた武器や飛行機や催涙弾や暴動鎮圧用装備や監視設備を提供したのがたいていは米国政府であったからである。米国の政策の徹底的な欺瞞性が暴露されつつある。

これまでのところオバマ政権は妥当な注意を払ってこの問題に取り組んできた。しかし、政策研究所のフィリス・ベニスは次のように警告している。

ネオコンの戦争屋どもと政府内外の自由主義的干渉主義者、それに議会内外の重要な反戦勢力をも含む強力な米国の世論がオバマ政権に対して市民を保護するためにリビアに飛行禁止空域を設定せよと要求している。

無用な流血を避け、はるかに強大なカダフィに忠実な軍隊に反対する民主勢力を守るためにできることは何でもするというのは、社会正義を主張する者の側に当然の存在する要求である。しかしリビアに飛行禁止空域を強制すれば、米国をかつて通った道に据えることになるだろう。その道はイラクにおいて20年間の禁輸を強制し、8年間にわたる戦争が続いて何十万人もの罪もない市民と4500人近い米国兵士の命を奪い、その他に数十万人もの人々を傷つけ、400万人以上のイラク人を住みかから追い出したのである。

チュニジアとエジプトでは抑圧的な政権が結局は民衆の圧倒的な意思の前に屈した。どちらの国においても、労働運動が中心的な役割を演じて民衆蜂起を革命に変え、暴力的な衝突を長引かせることなく独裁政権が権力を放棄せざるを得なくすることに成功したのである。しかし、リビアではそういう事態にはならずに、ムアマール・カダフィ大佐の政権がかたくなに権力にしがみつき、野蛮な残酷さで対抗し、リビアを内戦に引き込んだ。

重要なことに軍隊の中の数部隊と幹部を含む政権内の一部がカダフィを見限って民衆の側に立った。しかし民衆レジスタンスの組織化は貧弱であり、中央司令部も統一指導部も持たず、そして重大なことであるが、戦車も大砲も、リビア空軍に対する防御も持っていない。

民衆レジスタンスの中には米国とNATO諸国に飛行禁止空域を設定するように要求している部分もある。これはいくつかの政府を含む欧米諸国の他の勢力から共感を受けている。しかし、リビア人は一致して、外国軍がリビアに介入することを明確に拒否している。

フィリス・ベニスは人権弁護士で野党のスポークスマンのアブデル・ハフィド・ゴーガが「我々はいかなる外国の介入にも反対している。…この革命はリビア民衆自身によってやり遂げられるだろう。」と明言していることを報告している。そして政権を離脱して野党勢力の指導者になったリビアのアフマド・ガトロニ将軍は米国に対して「米国民を守りなさい。我々は自分のことは自分でできる。」と説得したのである。

思い起こすだけの価値があることであるが、米国はまた、サダム・フセインの軍隊を武装させ装備を与えて、イラクに対イランの決着を付けさせようとして、50万人以上の生命を奪った互いに破滅的な8年間の戦争にこの2つの国を引き込んだのである。ソビエトによる占領に対してアフガニスタンのムジャヒディーン・ゲリラを武装させたのも米国であった。そうしたゲリラ勢力のいくつかの部分が後にアル・カイダやタリバンとして再構成されたのである。そしてその事がどこにたどり着いたのかは我々みんなが知っている!

リビアに飛行禁止空域を設定して強制する軍事手段を米国が持っていることは疑いのないことであるが、ゲーツ国防長官は飛行禁止空域を成功させる前提条件としてリビア空軍に軍事攻撃をかける必要があると言っているのであり、そうなれば国際法の下での戦争行為を構成することになる。それはまた必然的に生まれる米国の犠牲者は言うに及ばず、数えられないほどの市民の死を結果として招くだろう。そしてアラブの国家の新たな紛争のまっただ中に米国を投げ入れて、中東全域と全世界ではるかに大きな怒りを巻き起こすだろう。

飛行禁止空域が設定されたとしても、装備の整ったリビア軍は大砲と戦車と他の重火器を使って、軽武装で組織化が貧弱な、大部分が訓練も受けていない民衆レジスタンス部隊を圧倒するという可能性は完全にある。そうなれば、米国は反カダフィ革命の敗北を防ぐために地上部隊を投入する必要にかられるだろう。

ウェスリー・クラーク退役大将は軍事介入について1、2のことを学んだ。ワシントンポスト紙の長文の論文(3月12日)で、彼はベトナム戦争以来の米軍の介入の記録を列挙した。

リビアの飛行禁止空域は最初は簡単に進むように見えるかも知れないが、もしもカダフィが進み続ければ、空爆と、爆撃と地上部隊の拡大、すなわちすでに過剰な部隊をもっと乱用することになる。

飛行禁止空域にどれほどの資源をつぎ込んだとしても、おそらく少なすぎるし、遅すぎるだろう。我々は、そんなことを言うために身を運ぶようなことは全くできないとしても、またもやイスラム教徒の土地で体制変更を押しつけるために米国軍を派遣するのだ。介入が成功するための基本的な条件は単に存在しないし、少なくとも存在したためしがないということを認めよう。米国は明確に表明された目的も、法的な権限も、関係する国際社会の支持も、現場の十分な軍事能力も持っていないし、リビアの政治は明確な結果を予兆させることは困難である。

我々は米国の介入の長い歴史の教訓から学ぶべきであった。我々はリビアに過去の過ちの復習科を提供してもらう必要はない。

フィリス・ベニスは自身の評論を以下の助言で結論づけている。:

リビアの将来と現在中東全域で進んでいる民主主義革命の多くの行く末はどうなるか分からない。オバマ政権とペンタゴンと戦争屋どもと米国の政策決定の支配層が米国の「国家利益」を石油が豊かで戦略的重要地域にある諸国と地域を米国が継続して支配することであると規定するなら、ワシントンは孤立化と敵意と高まるテロと憎悪に直面するだろう。

北アメリカと中東を吹き抜けた民主主義革命のプロセスはすでに長期間行き詰まっていた地域を変えてしまった。この地域の諸国民は自分の国の軍事力を大きなものにするのではなくより小さなものにすることを期待している。今こそ米国の政策がこの現実を認めるべき時である。リビアにおける飛行禁止空域にノーの声を上げることはオバマ政権が新たに民主化が進む中東において米国の新しい非軍事化した21世紀の米国の政策を作り上げるプロセスを始めるためにオバマ政権ができる最上のことである。

社会正義を求める運動の中で、抑圧的な独裁を打倒することを求める困窮した人々を支援したいと思うのは当然のことである。しかし、一時の衝動に駆られた善意だけでは適切な政策を作る基礎にはならないものである。

世界の民主勢力に私たちが提供できる最大の支援は、世界の警察官や、世界のいじめっ子や、米国政府の命令を実行したがるあらゆる専制君主や独裁者や暴君や独裁政権に対する武器商人としての役割を終わらせることである。

米国政府が世界の超大国を演じながら現在浪費している資源は雇用の創出や社会安全ネットの再建や米国内と世界の人々の膨大な要求に応えるために投資されなければならない。