2010年8月28日土曜日

イラク「敗走」連合声明

IVAW(戦争に反対するイラク帰還兵士の会)や女性平和団体コードピンクなどが「イラク敗走連合」と銘打って8月31日の米軍のイラクからの部分撤退についての声明を出しました。今回の「撤退」は占領のブランドのはり替えであると明言しています。

(日本語訳:イラク市民レジスタンス連帯委員会)

イラク「敗走」連合声明

7年間の戦争の遺産

http://ivaw.org/node/6111
末尾に署名をしている団体と個人の我々は、次の評価と勧告によって8月31日の米軍の部分撤退を特徴付ける。

*米国のイラク占領は継続し、イラクにおける米軍の縮小はせいぜい単なる占領のブランドのはり替えに過ぎないと呼ぶことができる。イラクの米軍兵士の数は最大16万5000人から削減されるが、それでもなお5万人の兵員と、約7万5000人の軍契約者と、5つの巨大な「恒久的基地」とバチカン市国の大きさの大使館が残されるだろう。

*米軍がサダム・フセインの野蛮な独裁を打倒してもイラク国民のより良い生活にはならなかった―ちょうどその正反対であった。占領の結果、基本的な社会基盤―電気や水や下水である―を一層破壊し、そしてそれは今日まで続いているのである。米国は第2次世界大戦の全部よりも多いトン数の爆弾を落としてイラクの電力、水道、下水システムを破壊した。かつて中東全体で最良であったイラクの医療と高等教育制度は大部分が破壊された。米国の対イラク戦争は暴力の波を解き放ち、100万人以上のイラク国民が死に、400万人が住みかから追い出され、そして、民族対立が国民を苦しめ続けている。我々は何百万人ものイラク人に重い傷を負わせ、再建の闘いを進める際にイラク人と地域住民と国全体に一生涯の苦難や経済的苦境を作り出したのである。

イラク国民の平均寿命は、戦争と医療体制の破壊によって、1996年の71歳から2007年の67歳へと落ちた。劣化ウランや白リン弾といった兵器を米国が使用したために、深刻な死傷者数を出し、たとえばファルージャでのガン発生率は今や広島の発生率よりも悪くなっている。

*米国の介入によって生み出された難民と国内で住みかを追われた人々の大部分は見捨てられている。400万人近い難民のうち、多くの人々が今やシリアやヨルダンやレバノンや世界中でますます絶望的な状況の中で暮らしている。証明書を持たない難民として、大部分は働くことを許されず、生きるために極端に低賃金の非合法の仕事(1日3ドル)につくか国連や慈善事業に頼らざるを得ないでいる。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)はイラク人女性の性売買が急増しているという資料を出している。

*イラクはいまだにまともに機能する政府がない。3月7日の選挙から何ヶ月もたっているのに、今なお政治的空白と毎月およそ300人の市民を殺す暴力が存在している。きちんと機能している民主主義は存在していないし近い将来に存在するようになるという兆候はほとんどない。

*イラク戦争は米軍兵士に恐ろしい犠牲を残した。100万人以上の米軍現役軍兵士がイラク戦争のつらい仕事に派兵された。4400人以上の米軍兵士が殺され何万人もが重傷を負った。米軍兵士の4人に1人以上が医療や心理治療の必要な健康問題を抱えてイラク戦争から帰国している。軍隊内のPTSDの比率が急増している。2009年には新記録となる245人の兵士が自殺した。

*戦争は米国の資金を枯渇させた。2010年現在、米国の納税者はイラク戦争に7500億ドル[約75兆円]以上を使った。負傷した退役兵士の生涯の看護費用とこの戦争の費用を支払うために米国民が借りた資金への利息支払いを合わせると、本当の費用は数兆ドルにもなる。こんな資金の悪用をしたために今経験している経済危機を引き起こしたのであり、学校や医療や社会基盤や汚染がなく環境に優しい雇用への投資などができないのである。

*嘘に基づいたこの破滅的な戦争に我々を引き込んだ米国政府高官たちは責任を取らされていない。ジョージ・ブッシュも、ディック・チェーニーも、コンドリーザ・ライスも、コリン・パウエルも、カール・ローブも、ドナルド・ラムズフェルドもである。誰1人もとらされていない。ジェイ・バイビーやジョン・ユーなど拷問を認めたブッシュ政権の弁護士たちも取らされていない。嘘をずっとつき続けた「シンクタンク」やジャーナリストや専門家たちは首になってなんかいない―大部分は今日アフガニスタン戦争の応援の先頭に立っているのである。

*戦争はイラクの資源の略奪と腐敗の制度化を引き起こした。米国国防省は2003年のイラク侵攻以後の人道上の必要と復興に当てられたイラクの石油とガスの資金の87億ドル[約8700億円]の使い道を明らかにすることができなかった。イラク侵攻は国家の石油に対するイラク政府の管理をむしばむことにもなったのである。2001年に、アメリカ最大のエネルギー企業の経営者たちを入れたディック・チェーニー副大統領のエネルギー対策本部はイラクのエネルギー産業部門を外国の投資に解放するように勧告した。その結果できたイラクの石油法案は、国際石油カルテルがその支配を再確立しようとしているので、イラクの資源を全世界規模で略奪するおそれがあるものである。しかしながら、石油法の採択は、強力な民衆による抵抗、なによりもまず石油労働者とその労働組合によって頓挫させられている。

*イラク戦争は我々をより安全にすることはなかった。拷問と異常な演出と無期限の拘束と暴力的でひどい襲撃と街頭での罪もない市民の射殺と人身保護令状[特に違法な拘禁を防ぐために被拘禁者の出廷を命令する令状]の欠落という米国の政策はアメリカ人に対する憎しみと過激主義の炎を燃え上がらせた。米国軍がイラクや他のムスリム諸国に駐留しているまさにその事が彼らの人員を募集する手段になっているのである。

 以上から、末尾に署名する個人と団体の我々は今回の部隊の撤退の機会にオバマ政権と議会に以下の行動を取るように要求する。

*イラクから全ての米軍と軍事契約要員を撤退し全ての米軍基地を閉鎖すること。

*イラク人が基本的な社会基盤を修復し、何百万人もの国内外へと家を追われた何百万人ものイラク人のための増加した費用を回復する助けとなる補償を行うこと。
*戦争による精神的肉体的負傷に苦しむ米国兵士を十分に支えること。

*米国をこの大惨事に引き込んだ責任のある政府当局者を訴追すること。

*資金を戦争から、環境に優しい雇用に焦点を当ててアメリカを再建するための財源に変えること。

*この破滅的な介入の教訓は連邦議会とオバマ政権がアフガニスタンでの戦争を終わらせる弾みにしなければならない。アメリカ国内の真の安全を作り出しアメリカを再建することに焦点を当てる時である。

Bay Area Labor Committee for Peace & Justice:
[サンフランシスコ]湾岸地区平和と正義のための労働者委員会
CODEPINK: Women for Peace: コードピンク:平和を求める女性の会
Community Organizing Center: 地域組織化センター
Courage to Resist: 抵抗する勇気[派兵拒否兵士の支援組織]
Fellowship of Reconciliation: 友和会[宗教の宗派を越えた平和組織]
Global Exchange: グローバル・エクスチェンジ
Institute for Policy Studies' New Internationalism Project:
政策研究所・新国際主義プロジェクト
Iraq Veterans Against the War: 戦争に反対するイラク帰還兵の会
Jeannette Rankin Peace Center: ジャネット・ランキン平和センター
Just Foreign Policy: 公正な外交政策を求める会
Military Families Speak Out: 声を上げる軍人家族の会
Nicholas (Nick) Dibs, Independent candidate for Congress:
ニコラ(ニック)・ディブス 無所属連邦議員候補
Pax Christi – USA: パックス・クリスティー・USA[カトリックの平和運動団体]
Under the Hood: アンダー・ザ・フード[フォート・フード基地前の反戦カフェ]
United for Peace and Justice: 平和と正義のための連合
US Labor Against the War: 米国反戦労働者の会
Veterans for Peace: 平和を求める退役軍人の会
Voices for Creative Nonviolence: 創造的非暴力の声
Voters for Peace: 平和を求める有権者の会
War Is a Crime: 戦争は犯罪だの会
Women's International League for Peace & Freedom (WILPF) Los Angeles Branch
婦人国際平和自由連盟(WILPF)ロサンジェルス支部[1915年創設の国際女性平和団体]