2010年4月29日木曜日

IVAW・兵士がイラク占領に反対する意義

IVAW(反戦イラク帰還兵の会)が、兵士がイラク占領に反対することの意義をHPに掲載しています。(日本語訳:イラク市民レジスタンス連帯委員会)

ゲストのブログ投稿:見えないものを見えるようにして石油によって駆り立てられた戦争を終わらせる
ジョセフ・ユーハス、アントニア・ユーハス 2010年3月21日
IVAW(イラク反戦帰還兵士の会)HPから

我々は、父親と娘として、平和のための退役軍人の会の会員と反戦イラク帰還兵士の会の全国諮問委員として、心理学者と石油専門家として、以下の疑問に答えるために、このブログを一緒に書くことに決めた。すなわち、アフガニスタンやパキスタンにおける戦争と同様に、8年目に入ったイラクにおける戦争を終わらせるために、現役兵士と帰還兵士がどのような貢献の方法があるのか?という疑問である。我々は石油のための醜い戦争を始めるために利用された「心理的不可視」という戦術を暴露することの必要性に焦点を当てている。我々の答えは、IVAWが単に同じことをもっとやり続けなければならない、ということである。すなわち、戦争を可視化することなのだ。

私は1965年の春に正規の海軍の大尉としての仕事を辞めた。アジア大陸のおける長期間の地上戦が成功する展望は絶望的なものに見えていた。それ以上に、この敗北しつつある問題に道義的な正当化の根拠がなかったのである。唯一の名誉ある行為とは自らの剣をしまい、新たな人生を探し出すことであった。私は1965年にその結論に達した唯一のアメリカ軍兵士ではなかった。ベトナム戦争に向かう軍隊内部での大規模な辞職と消極的積極的抵抗がベトナム戦争を終わらせる唯一の理由ではなかったが、主要な理由の一つであったことは確かである。米国軍内部での同様の抵抗がもう一度今日の戦争を終わらせる鍵となっている。

我々はブッシュ政権が打ち倒され2008年に顕著な勝利を達成したのであり、「突破だ、そうだ、突破だ!」という選挙運動のスローガンで、イラク戦争を100年間続けるのだと誓った共和党候補は、イラク戦争を終わらせると公約した候補に支持が集まることによって拒否されたのである。残念ながら、政治的勝利の結果は、より広範な世論の中では戦争はすでに終わったのだという意識となり、今までに戦争ははっきりと終わらせられたはずだと考えていた人々にとって幻滅と不信感にさえなってしまった。

我々は、オバマ大統領がイラク戦争を大体(完全ではないにしても)終わらせるという彼の公約を実現する意志を持っていることは確信している。しかしながら、オバマ政権は、中東全体に地上基地を持つ米軍の恒久的な駐留を維持し拡大さえするという前政権から採用されている政策を継続していることも確信している。これは1965年にアメリカがベトナムに介入したのと同じくらい-おそらくそれ以上に-今日では擁護できない不道徳な代物である。中東に米軍が恒常的に駐留すると言うことには多数の目的があるが、その中で優先順位が高いのは、中東の石油と天然ガス資源の拠点獲得の追求である。

戦争の直接の結果として、エクソンモビール社やコノコフィリップス社やオクシデンタル社はこの30年以上でイラクにおける生産契約を受注した最初のアメリカの石油会社となった。エクソンモビール社は世界で2番目に大きい油田の契約を獲得した。イラクでなくても近隣地域で、こうした事業の安全性を確保し、さらに米国の企業が参入するという目的を達成するために、米軍の駐留が要請されそうだ。この契約は歴史的なものではあるが、石油の勝利は達成からはほど遠い。それはイラク国民、ヨーロッパ諸国民、IVAWを含むアメリカ人の継続した組織化の奮闘のせいである。この活動家たちは7年間にわたって石油問題に明るいスポットライトをあて、イラクの石油部門を完全な国有から、イラク石油法の制定によって外国の石油企業の所有と支配に道を開くほとんど民営化したシステムに変えようというブッシュ政権と石油企業の試みを妨げたのである。イラク国民が石油企業自身によって大部分が起草されたこの法律の制定に抵抗しただけでなく、契約を求めていた他の多数の米国の会社が、ロシアやアンゴラや中国などの企業が優位となって拒絶されたのである。

残念ながら、大手石油企業の政治的影響力は、バラク・オバマの当選と共に縮小しはしたが、無くなったという状態とはほど遠い。大手石油企業は今も世界で最も豊かな産業であり、政治の政策決定に影響を与える最も多額の「現金」を持っている。その利益は米国の政治体制全体に固く結びついてもいて、たとえオバマ大統領が取り除きたがっても彼と彼の政権はほとんどそんなことはできないほどである。残念ながら再びオバマ政権はそのようなことに対する関心を示しもしなかった。

石油ロビーの圧倒的な経済力は、石油と天然資源が無くなるまで、中東における駐留を維持しようとする抑えることのできない軍事的要求を作り出す。そのような長期の軍事的関与を維持するために、オバマ政権はブッシュの「心理的不可視」戦術を継続することに決めたのである。米国内の戦線では、戦争の真実を隠す平和の幻想が存在する。永久に続く軍事国家を維持する唯一の方法は、戦争が存在しない-すなわち、より正確には、米国本国の国民にとっては経費も結果もかかってこない戦争であると見せかけることである。

米国内の戦線では、これはアメリカの歴史上だけではなく、おそらく世界の歴史上においても、税金が下げられた初めての戦争である。企業にかかる戦争税はなく、戦争から利益を上げるのをやめろという要求はずっと少ない。それは「何も費用のかからない」、つまり「無料」の戦争である。

我々はだまされて、イラクとアフガニスタンで戦った200万人近い兵士と兵士の家族の推定1000万人がほとんど目に見えないかのように行動している。1944年には米国のどの町を歩いても、戦時公債や配給切符や前線に送る燃料を節約するためのマイカーの相乗り通勤といった様子を見ただろう。家々は家庭菜園を開き、大きな金星章が息子を失った家族の窓にかけられていた。今日、同じ通りを歩いて自問してみよう。「これが戦時中の国だろうか?」と。

この不可視性は様々な方法で作り出されている。戦争とは不愉快な現実であり、人々の目をそこからそらすのは簡単だ。徴兵制は存在しない。イラク帰還兵には国民の「帰国祝い」もない-彼らがそのために戦ってきた国に帰っても歓迎されないのである-過去の全ての戦争では、ベトナム戦争でさえ、帰還兵士には高い注目が集まったのに。従って、永続的な戦争を始めることができたのは、誰もそれに気づかないからなのである。そして気がついた人たちは忘れ去られるのである。

 実際にはこれは4兆ドル近くを費やした戦争である。それはどうしても必要とされる人間への社会サービスに対処する能力をオバマ政権から取り上げた。我々はむしろ、世界がかつて知る中で最も豊かな産業に奉仕するのではなくても、明らかに支持して戦争の奨励金を支払っているのである-これが戦争をアメリカ国民から覆い隠すもう一つの理由である。石油大企業はアメリカ合衆国の中で最も憎むべき産業である。それは嫌われていると言うだけでなく、疑われている。その生産物でさえ、生産から、輸送、精製、販売に至るまで、簡単に言って「醜い」のである。従って、この戦争は、実際には特定の敵に対して戦われているのではない。「敵がいない」で我々が戦っているものの真実が公表されていないならば、戦っている「実在の」兵士もいないはずである。これの最も文字通りの結果は、無人飛行兵器の採用の増加と、無人飛行機を操縦する人々も、それによって殺される人々も、人間は誰も参加していない、という神話の永続である。

しかし我々は絶望していない。直近の選挙ではブッシュ政権が打倒された。石油の問題が世論の視野の中に残り、完全に成功したわけではない。より重要なことは、IVAWが「意外な剣の抜き方をする」比類のない力強い立場に立ち、2つの戦線における戦争、すなわち戦場における戦線と米国内の戦線を終わらせる闘いをしていることである。
戦場における戦線では、政府から戦争をする能力を取り上げる手段として消極的、積極的抵抗をするという選択肢のみがある。シェブロン社がカスピ海からの石油の送油を兵士に守らせたくても、兵士が戦うことを拒否すれば、シェブロン社は敗北する。

米国内の戦線においては、IVAWが自らとその会員を可視化しようとしている現在進行中の試みは、今日ではかつて無いはるかに大きな重要性を持っている。-それは戦争が続いていると言うことを明らかにするだけではなく、自らの実例を通じて、勝つことができる闘いであると過去が証明したものを続けるように他の人々を励ますのである。

※ジョセフ・ユーハスは環境心理学者でありコロラド大学の建築環境デザインの教授である。彼は「サイコロジー・トゥデー・マガジン」に定期的にブログを寄稿している。

※アントニア・ユーハスはグローバル・エクスチェンジのシェブロン・プログラムの責任者で、「石油の専制政治:世界で最も強力な産業とそれを止めるためにしなければならないこと」と「ブッシュの政策:世界を侵略する、一度に一つの経済」の著者である