2010年11月1日月曜日

ウィキーリークスのイラク戦争に関する公開資料

ウィキーリークスのイラク戦争に関する公開資料についてのIVAWの声明です。
(日本語訳:イラク市民レジスタンス連帯委員会)


「イラク戦争の記録」についてのIVAWの声明―説明責任を求める

最近のウィキリークスによる「イラク戦争の記録」の公開は米国史上最大の機密漏洩[ろうえい]であり、戦争に反対するイラク帰還兵の会が2004年の結成以来発言してきたことを広範囲にわたって細部まで明らかにしている。米国は7年間にわたって血にまみれた占領の中心となり、その占領では戦争犯罪が日常茶飯の違法行為となり、市民の犠牲者が著しく過小報告され、民間軍事会社の傭兵が暴れ狂ったのである。

イラク戦争の記録についてのIVAWの声明―説明責任を求める
最近のウィキリークスの公開資料―イラク戦争の記録―は、イラク戦争に固有な、市民の死亡率の高さや拷問を含む広範囲に及ぶ残虐行為に対して重要な光を当てた。イラクとアフガニスタンの戦争の帰還兵士として、我々は米国政府がこの情報を米国民から隠蔽しようとしたどころか、都合の悪い部分を削除した欺瞞的な戦争の説明をしたことに憤激しているのであり、我々はこの情報とそれ以上の情報が出てくることが不可欠であると考える。IVAWのメンバーは現場で戦争の現実を直接経験し、IVAW結成以来、イラクとアフガニスタンにおける同じような残虐行為について語ってきた。我々は米国民に、我々に合流して米国政府が占領をやめ、我々の兄弟姉妹を帰国させろと要求してもらいたいと要請している。
米国政府は何年にもわたって市民の死者数を数え続けることはしないと主張してきたが、最近の公開資料は実際には米国政府が数え続けていることを明らかにしている。2004年と2009年の間に、この新たに暴露された記録によると、少なくとも10万9032人のイラク人が死に、そのうち6万6081人が民間人であった。ガーディアン紙はイラク戦争の記録は米国の軍と政府が、イラクの兵士と警察官による虐待と拷問とレイプと殺人の何百もの報告を事実上承認していたことを明らかにしていると報告している。これらの最近の暴露事実は、「アフガン戦争日記」[訳注1]や「付随的殺人のビデオ」[訳注2]と共に、交戦規則が過大な暴力を見込み、米軍の駐留が不安定化を引き起こし残忍な仕打ちをする軍隊として活動している日常生活の構造に組み込まれているのだという戦争の構図を作り上げてみせている。「イラク戦争の記録」は、きわめて重要であるが、同時制作された報告であり、米軍への非難を最小限にするためにそれ自体が歪曲されているかもしれない。それでもなお、イラク戦争の記録はイラク戦争の事実を検討する際の証拠の重要部分を占めるのであり、・u桴リ拠はより多くの文書や情報の公開および関係者個人による補強証拠によってのみ改善することができるものである。そのために、IVAWの会員はウィキリークスの「アフガニスタン戦争日記」と「イラク戦争の記録」の両方を、我々が参加した出来事を確認し実際に起こったことにより多くの光を当てるために精査している。
訳注1:「アフガン戦争日記」は2010年7月にウィキリークスが7万6900のアフガン戦争に関する未公開資料を公開
訳注2:「付随的殺人のビデオ」は2010年4月にウィキリークス「付随的殺人」のウェッブサイトに米軍がイラク市民を殺害するビデオの場面を投稿
IVAWは結成以来こうした残虐行為や虐待について声をあげてきた。IVAWは2001年9月11日以来軍務に就いた2000人以上の帰還兵士と現役兵士で構成されている。我々はイラクとアフガニスタンからの全占領軍の即時撤退と、これらの国の国民への賠償と、精神面の治療を含む帰還兵士に対する完全な年金を要求する。2008年のメリーランドにおける冬の兵士公聴会で、50人以上の帰還兵士と現役兵士のIVAW会員がこれらの国で実行しろと言われた命令について公然と証言し、過大な暴力やトラウマや虐待についての話を分かち合った。

ウィキリークスの「付随殺人」のビデオで撮影された部隊の中にいたジョシュ・スティーバーとイーサン・マッコードの2人のIVAW会員は、事件が撮影された経緯は「少数の悪質な兵士」の孤立した事件ではなく、むしろ、これらの戦争の性質の一部であると語っている。「米国について志の高いあらゆるものを代表しているとかつて友人や私が考えていた戦争にはほとんど責任性なんてありませんでした。」とイラク戦争の記録の発表を見越してスティーバーは書いた。公開書簡の中で、スティーバーは政策決定者に「これらの戦争と戦争についての完全な真実について責任を取れ」と要求している。

帰還兵として、我々はイラク戦争の記録に収録されている暴力は占領下に生きる人々のトラウマになっていることを知っている。イラクとアフガニスタンの戦争はまた、こうした命令を実行するという任務を負わされた兵士の中で、軍事活動によるトラウマや自殺の割合が信じがたいまでに増加したことが特徴になってもいる。昨年、239人の兵士が自殺し、1713人の兵士が自殺未遂で一命を取り留めた。74人の薬物過剰服用を含む174人の兵士が危険性の高い活動によって死亡した。ランド・コーポレーション[非営利の調査研究所]によると、帰還した兵士の3分の1は精神上の健康問題を報告しており、帰還した現役兵士全員の内の18.5%が外傷性ストレス障害[PTSD]か鬱病と闘っている。10月7日に開始したIVAWの「健康回復作戦」は、外傷性ストレス障害や軍隊内性的トラウマや外傷性脳損傷や他の精神的肉体的負傷を負っている兵士の再配備をするという残酷で非人間的な活動―すなわちイラクとアフガニスタンの占領の継続の基礎となる活動である―を終わらせることを追求している。

ウィキリークスの創設者のジュリアン・アッサンジの性格を攻撃する批判者たちは、本当の問題から目をはずしイラク戦争の記録の内容から大衆の関心をそらすために、偏見に訴えた論議を利用しようとしている。我々は包み隠さずこれらの文書の内容を討議することを通じて進めていくし、この討議は脇にやってはならないと考える。さらに、過去のウィキリークスの暴露に関して、米国政府当局と米軍当局は、これらの文書を国民に暴露したことで訴追されているブラッドレー・マニング陸軍特技官を早速中傷した。しかし、米国民の名で闘われ、米国民の税金で資金が出されている戦争についての正確な情報を得ることは米国民の権利であると我々は主張するし、国民がこの情報を共有することを支持する。戦争犯罪を暴露することは犯罪ではない。

政府がウソをついていたことは弁解の余地がない。当局は「国家の安全」を名目にこの情報を秘密にし続けてきたが、当局が本当に恐れているのは国民世論であり、大手メディアにこれらの戦争の真実が出てくれば国民世論が自分たちに反対することを知っているのだ。イラク人の死者の正確な数字や、拷問の事実の認識や、民間傭兵の役割の全面的な暴露は民主主義国家の中では公開するべき事実である。真の国家の安全とは政府の透明性と責任と出版の自由と不当な戦争と占領に対する財政支出を終わらせるということが基準となる国で作り出されるのである。沈黙と秘密が続くことはイラクとアフガニスタンの人々の安全に大変な脅威となるのであり、我々は公開性と責任性とこうした暴露に関する真の論議を要求する。
我々はこれらの戦争で失われ破壊されたイラクとアフガンの人々の命のことを深く悲しむ。我々はまた、戦闘か自殺によって失われた我々の兄弟姉妹を腕にいだいて嘆き悲しむ。イラク戦争の記録はこれらの戦争の過酷な事実、すなわち我々―帰還兵士―が毎日生きている現実の一部を米国に持ち帰ったのである。我々は、イラクに今もいる5万人の「非戦闘要員」兵士の即時撤退を含めて、両方の戦争を本当に終わらせることを要求する。「イラク戦争の記録」はこれらの戦争によって傷つけられた全ての人たちに対して平和と癒しと補償が緊急に必要であると言うことを強調している。その最初の一歩は我々の兄弟姉妹の兵士たちを帰国させることである。
連帯して
戦争に反対するイラク帰還兵の会